実践!工務店が取り組む建物検査 / 日経BP

リノベーションなどの大掛かりなリフォームの際に建物検査が欠かせないのは、現状性能に基づいた最適な改修プランを顧客に提示するためとも言える。建物の性能を正しく把握できれば、必要な場所に適正な改修費用をかけた提案が可能だ。バランスが取れた提案ができれば、顧客の満足度は高くなる。設備交換のような修繕工事ではなく、建設工事規模が大きいものほど住宅全体の現状性能を知ることが重要だ。

 顧客にとっては、建物の問題点が明確になるため、本当に必要な建設工事が何か把握しやすい。建設工事の優先順位が付けば、段階的なリフォーム計画も可能になる。なにより、建物の客観性能を把握できる安心感は大きい。他方、施工者にとっては、プラン提示に際して必要な建設工事であることを具体的に説明できるのが利点だ。顧客の納得を得られやすく、建設工事開始後に問題が発覚するといった想定外のリスクも回避、軽減できる。

 国土交通省の長期優良住宅先導的モデル事業として採択された「既存住宅資産化リフォームシステムモデル」を開発した丸山工務店(東京都江東区、リフォーム部門はマルハウジングサービス)の木造戸建て住宅向けの手順を例に、建物検査の概要や流れについて追ってみよう。

丸山工務店が使用する建物調査用の工具例。日常使用する工具とほとんど変わらないが、オートレーザー(写真中央)などの電気計測器等やコンクリートの強度を測定するシュミットハンマー(写真右上)などが加わる。築年数が古い既存住宅の調査にはゴーグルやマスクは必携道具。光源は、電池式の懐中電灯を用いるが、AC電源のライトが必要になる場合もあり、延長コードと併せて用意している(写真:日経ホームビルダー)
                             
ヒアリングと事前調査

 まずは現場を訪ね、ヒアリングと事前チェックを実施する。

 ヒアリングでは、顧客の工事希望などを聞き取るだけでなく、その家を将来的にどう使い、どう住み継いでいくかといった中長期的な使い方を聞き出すことが重要という。

 次いで、建物の築年など基本情報の確認や設計図書の有無などについて、「事前チェックシート」(下の写真を参照)を基に質問する。これまでの修繕やリフォームの実施の有無についても確認。また、地盤に関する調査資料がないかも確認する。

 併せて、建物の設計図書類についても確認する。築年の古い建物だと図面がない場合も多いが、その場合はその場で採寸を行い、次回調査までに間取図を作成する。

 重要なのが、点検口の有無の確認だ。建物検査に際し、床下や小屋裏に入り込める経路があるかを必ず確認する。専用の点検口がなくても、押入の天井や1階の床下収納などから進入できれば問題ない。こうした経路が全くない場合は、建物検査のための点検口(進入口)を新設してよいかを確認する。

リフォームの依頼を受け、初めて現場を訪れる際に使用する「事前チェックシート」。建物の基本情報を書き込めるようにしてあり、また必要な設計図書等の資料の有無もチェックできる。チェックシート下段には点検口の有無の確認項目もあり、現状でどの程度の建物調査が可能かを入念に調べる(資料:丸山工務店)
                                
                    
現場調査・外まわり

 1回目の打ち合わせ資料を基に、日を改めて建物検査を中心とした現場調査を実施する。丸山工務店の場合、作業はスタッフ2人で訪問して、午前9時から午後3時くらいまでの時間をかけて行っている。

 同社では下の写真の「現状建物調査チェックシート」を基に調査を進め、結果を書き込むとともに必要箇所について写真を撮影する。

 屋根や外壁、開口部、バルコニーなどの外まわりについては、ひび割れや欠損、浮きや剥がれ、隙間、腐食、ぐらつきなどの有無をチェックする。モルタル壁や床などは必要に応じて打音ハンマーを使用して軽く叩き、内部の劣化度合いを確認する。

 また、外まわりは雨水の浸入を防止する重要部位だけに、シーリング材の劣化など防水性能についても念入りにチェックする。

 日経ホームビルダー2012年6月号の特集「現場で学ぶリノベの極意」では、この他にも丸山工務店が実施している建物検査の内容や手順などを紹介した。建物検査をどのようにすればよいのか、参考にしてほしい。

丸山工務店の現状建物調査チェックシートは調査部位別に5枚に分かれている。項目は大きく「屋根まわり」「壁・軸組」「筋交結合部・柱頭柱脚接合部」「床」「基礎」「温熱環境」「劣化対策」「維持管理のしやすさ」「火災時の安全性」「高齢者等への配慮」に分けられ、2人の担当者がそれぞれ個別に調査する(資料:丸山工務店)

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