建築士事務所の責任 / 日経BP

 ミューザ川崎の天井崩落に関する最終報告を、日経アーキテクチュアは4月10日号で「吊り元の金具の破壊から連鎖崩壊」と報じた。フック状吊り金具の、カタログには「900mm間隔以内、垂直荷重でご使用ください」となっているのにもかかわらず、斜め下に引っ張られるように使用されていたという。

 東京新聞が2月15日付朝刊に掲載した「設計図と異なる施工」という見出しの記事では、「つり天井を支える鉄骨の筋交いが二割近く不足するなど設計図面とは異なる施工がされていた」と同じ事件を別の視点から捉える。「一般には、図面から変更されることはある。そして、その変更が設計者から市側に渡る図面で正しく反映されているか、こちらでは分からない」と、工事を担当した清水建設のコメントが紹介されていた。市から受け取った図面通りに仕上げただけのことで、施工会社の責任ではないと言いたいのであろう。

 また、4月21日の東京新聞には、「施工、設計と異なる疑い」と大きな活字で、東日本大震災で崩落した「コストコ」駐車場スロープの事故について、事件の捜査関係者への取材記事を載せている。建物本体とスロープを結ぶ部分が、建築確認を受けた設計とは異なる方法で施工された疑いがあるようだ。

 建設賠償保険の事故報告でも、「確認を受けた図面と内容の異なる設計図書を誤って使用した」という事例を、これまでに何回か経験している。保険屋にとっては不可解としか言いようがない。ある時は、設計変更に伴う工期の遅れや費用の増大という問題の処理に窮した挙句の決断と推察した。またある時は、当初の確認申請図面に基づいて材料の手配が済んでいたための窮余の一策ということもあったのであろう。

 日経アーキテクチュアは4月25日号で「朱鷺メッセ訴訟の教訓」という特集を掲載した。「設計ミスの汚名は死刑も同然」――。SDG・渡辺邦夫代表の悲痛な叫びが語られている。この中で渡辺氏は、「(土木の場合と異なり)建築の場合はそんなに細かいスペックはない。設計者や施工者が相談しながらつくっていく」とも語っている。これは、建築の場合、設計図が不完全な状態で施工に取り掛かることを示唆している。

 建築の場合には、独占的な国家資格を持つはずの建築士が描く設計図の担う役目が、場合によって誠に不思議な位置付けになっている。渡辺邦夫氏がコメントしているように、土木の世界ではしっかりやっていることなのだ。建築の世界では、なぜそれができないのか。そればかりか、“走りながら図面を書く”ようなことにもなっている。

 “設計と異なる施工”や“不完全な設計図”が存在するという話は、一般社会ではなかなか理解されないだろう。どうみても、やるべきことがきちんとやられていない。物づくりの世界で、設計図と異なるものを造ることをやっていたら、まともなものができるはずがない。事故が起こるのが当たり前だと、保険屋は考え込む。

建築士事務所のあるべき姿

 じっくり時間をかけて、細かいスペックまで準備した上で、しっかりした建築物を建設するような習慣にはできないものであろうか。連載の第2回「構造設計者の責任:適判という検算をなぜ避ける」でも、構造計算書のチェックについて、同様の指摘をした。その際、読者から寄せられた声は、「企業が次々と倒産している状況で勝手なことを」「いかにも素人はだしの意見で唖然としている」といった否定的なものが多かった。実態として、時間も金もかけられないというのが業界の大勢のようだ。

 だが、大金を注ぎ込む以上、生涯にわたって「安全・安心」の約束された建物が完成することを期待している建築主は多いはずだ。特に、住宅には、家族の一生に一度の「夢」が託されている。建築主たちが、そうした期待や「夢」を託す相手と言えば建築士であろう。それも、「なるべく安く」と注文を付けるに違いない。

 そこへ「設計料はいただきません」などというライバルが出現するのだ。手間暇かけてタダで設計ができるはずがない。よその計画で上乗せして稼ぐか、ほかの経費に紛れ込ませるか、まともなことでは済まないはずである。ここで安易に妥協して、低価格で仕事を請け負うと、行き届いた作業ができるはずがない。そして事故という最悪のシナリオが待っている。

 ここは開き直るしかない。頂くものはいただく、その代わりに設計料にふさわしい仕事をする、ということを貫かない限り、プロとして納得のいく仕事になるはずがないのだ。ライバルを蹴落とすには、この論法で建築主を説得するしかない。受け入れられなければ、そのプロジェクトからは“勇気ある撤退”を選択するのみだ。

 また保険屋が勝手なことを言っていると、読者には思われるのであろう。だが、こうしたポリシーを悠然と貫き通している建築士事務所を知っている。その所長は、施工会社には煙たがられるほど徹底した工事監理業務を自ら行ってきた。酒が大好きで、同席した宴席は楽しいものだった。だが、プライベートでは施工者とはお茶も飲まないと語っていた。あくまでビジネスに徹している。

 準備の段階で十分時間をかけて建築主との間で計画に関する情報の共有化を図り、その記録を残し検証しながら業務を進めることも大切だ。建築主との間で信頼関係が確立できれば、万一ミスが発生しても、傷口は小さく収まる。仕事は口コミで増えてゆく。継続して生まれる仕事によって、施工会社をはじめとしたパートナーとの信頼関係も自然に構築される。時間をかけてやるべきことをやり、それにふさわしい報酬を手にする。建築士事務所の目指すべき「王道」がそこにある。

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