外装剥落の責任 / 日経BP

静岡県の施設「グランシップ」で、5年間に40件もの外装材の剥落事故が起きていたことを日経アーキテクチュアが2009年11月9日号 「『グランシップ』で天然スレートの落下相次ぐ」で報じた。以来その責任を巡る議論に注目している。このほど抜本対策検討委員会による対策案がまとまった。県にとっては、空港を作った直後のただでさえ苦しい財政の中で、8億~14億円かかる必要不可欠の公共事業となりそうだ(日経アーキテクチュア2010年12月13日号「磯崎新氏設計の複合施設『グランシップ』で対策委が3案示す」)。県は対策を実施するとともに、責任追及に着手するだろう。

 「屋根石材落下のおそれがあり危険なため、植栽内へは絶対に立ち入らないでください」という大きなたて看板が設置されたのは、2009年10月のことだという(日経アーキテクチュア2010年3月8日号「特集 建材落下はなぜ続く」)。その月の半ばに発生した、2.65kgのスレート片(縦11cm、横45cm、厚さ2.5cm)の落下事故がきっかけとなったようだ。18mの高さから降ったということだから、もし人の頭を直撃していれば致命傷になりかねなかった。大きさは異なれ、40回も剥落事件があったにもかかわらず、この間に人的被害が出なかったのは奇跡的と言ってもよい。

 本来であれば、2004年7月13日と14日に連続して事故が発生した時点で、立ち入り禁止の措置が取られるべきであったのではないか。と言うのも、施工中にも破損事故が発生していたという事実があるからである。県がその重い腰を上げて、落下しそうなところに植栽や防護屋根を設ける対策に着手したのは2006年であった。決して迅速とはいえない県の対応に、建築物の管理者としての危機感の欠如を感じずにはいられない。

設計者には剥離事故を知らされていなかった?

  設計者である磯崎アトリエの対応も当事者とは思えないものだ。外装材の選定理由などを問うた川勝平太知事の公開質問状に対する回答書には、「新聞報道など拝見」とある。気の毒なことに設計者には、それまでの剥落事故を知らされていなかったらしいのである(ケンプラッツ2010年12月20日「なぜ外装材が違う?グランシップとなら100年会館」)。

 いずれにしろ、最初の剥落事故が起きた2004年6月から、県が危険防止看板を設置するまでの期間、屋根材剥落の危険性は利用者に知らされることなく放置された。余りに悠長な関係者たちの対応には、危機管理能力が欠如していると指摘せざるを得ない。万一けが人が出た場合、建築物の占有者・所有者は土地の工作物責任(民法717条)によって無過失であっても責任を負わなければならない。PL法同様に、「厳格責任」を負わされている。

 さらに、建築物のこうした瑕疵について、設計者や施工者に責任があると判断されれば、この法律の第3項には、それらに対する求償条項も用意されている。まして、2007年7月6日最高裁判決は、建築物の安全性を欠く瑕疵については、不法行為責任が成立するとしたのである。基本的な安全性を欠く建物の設計者や施工者は、直接の契約関係がない利用者に対して賠償責任を負う可能性は十分にある。

 さらに言うならば、輸入部材については、輸入した者が製造者・加工者と同様に製造物責任法(PL法)上の責任を負う可能性すら規定している。(製造物責任法第3条)建築部材は、工場出荷の時点で立派に動産であり、建築物の一部を構成したとしても、法的には動産であった過去を消し去ることはできない。シックハウス問題を想定すれば自明のことである。こと建築物の安全性に関しては、被害者救済のためには万全の法律体系となっている。

 法律上の責任云々はともかくとしても、一時に多数の人間が利用することになる公共建築物に求められる安全性は、デザイン上の魅力を犠牲にしてでも確保されなければならない。東海・東南海地震の発生が心配される地域だけに、一刻でも早く、補修に着手して欲しいと願うばかりである。

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