“鉄高ショック”、企業再編に号砲 / 日経BP

中国の景気回復で、鉄鉱石や鉄スクラップなどの価格が高騰し始めた。日本の産業界は製品デフレと資源インフレの板挟みで窮地に立つ。資源高が続けば、鋼材の価格交渉は企業の存亡をかけた攻防となる。

 日本産業界の国際的な地位の急低下を宣告するかのようだった。

 まだ肌寒い3月上旬、資源大手ブラジル・ヴァーレの幹部たちが新日本製鉄やJFEスチールなど鉄鋼メーカー本社を訪れた。

 「2009年度比90%アップ」――。2010年度の鉄鉱石の価格交渉で、ヴァーレ側は大幅な値上げを求め、過去最高値に迫る1トン当たり100ドル強を提示した。鉄鋼メーカー側はひとまずサインを保留したものの、関係者は「交渉の余地はほぼない」とため息をつく。

交渉で足元を見られる日本勢

 年初から徐々に始まった鉄鉱石の交渉は、回を重ねるごとに価格がつり上がってきている。

 最大の要因は中国が輸入を増やして需給が逼迫し、鉄の原料となる鉄鉱石と石炭のスポット価格が急騰しているためだ。鉄鋼メーカーは石炭についても、今年4~6月期の価格で2009年度比55%の値上げとなる1トン当たり200ドルをのんだ。

 なぜ日本勢は資源メジャーとの価格交渉で劣勢に立たされるのか。それは、鉄鋼メーカーをはじめとする国内産業の“購買力”が低下しているからだ。世界一の鉄鋼消費地となった中国の粗鋼生産は、2009年に前年比13%増の5億6784万トンと世界の46%強を占めるまでに至った。2010年度の日本の粗鋼生産量は1億トンを超える見通しだが、それでも中国の5分の1以下だ。

 日本の景気が良く鉄鋼メーカーがアジアで存在感を発揮し、資源側も寡占化していない頃には、日本勢は資源大手にとっても“上客”だった。しかし、中国やインドなど新興国の台頭で、顧客の1人になり下がったのが現実だ。

 資源メジャーは世界一の需要家である中国には太刀打ちができず、直前の中国での値上げ交渉は思うように進まなかったようだ。「資源メジャーは立場の弱い日本で大幅値上げを既成事実化して、中国と再交渉するつもりだろう」とある鉄鋼商社担当者は指摘する。

 一方で、鉄鋼世界最大手の欧州アルセロール・ミタルは早々と2月に資源メジャーと大幅値上げで決着したとされる。世界各地で鉱山権益を持つミタルにとっては原料価格の高騰は日本勢ほどには響かない。むしろライバルを蹴散らすうえでは好材料だ。

リーマンショック後の最高値に

 資源メジャーに対して劣勢に立たされる日本だが、国内にも優良な資源がある。製造工場の端材や建築物の解体現場から発生する鉄スクラップだ。

 鉄鋼大手はこれまで鉄鉱石の価格が上がると、比較的安価な鉄スクラップの調達を増やしてきた。しかし、その鉄スクラップ価格も上昇し始めた。

 3月10日には関東から海外への輸出価格が3万4000円まで上昇。それに負けじと関東の標準品「H2」価格が、1トン3万5000円をつけた。2008年10月以降、3万円以下にとどまっていたものの、年初からわずか2カ月間でおよそ1万円も上昇した。リーマンショック後の最高値である。

 鉄スクラップ価格は、世界景気や産業の勢いを鮮明に反映する。鉄スクラップの需要家は世界中の鉄鋼メーカーである一方、供給に関しては日本や米国などの先進国に偏る。中国をはじめとする新興国で需要が伸びているにもかかわらず、不況下の先進国で供給が増えないために需給ギャップが生じて価格が上昇しているのだ。鉄スクラップ大手の鈴徳(東京都墨田区)は、「ビルなど建築物の解体が減った。在庫が増えない」と話す。

 日本の場合、政権交代の影響も無視できない。民主党政権のスローガンは「コンクリートから人へ」。公共工事の削減のあおりで、鉄スクラップの供給量が減っている。

 加えて、韓国の鉄鋼メーカーは中国での鋼材需要を見越して、高炉や電炉の生産能力を増強した。中国や韓国など国内の供給量が足りない国が、先進国で発生する鉄スクラップに食指を伸ばす。鉄スクラップ高騰の理由である。実際、2009年には日本から海外への輸出量が940万トンと過去最高を記録した。

2008年より打撃は大きい

 日本の産業界は今回の資源高に対してかつてない危機感を抱いている。これまで日本は未曾有の資源高を2回経験してきた。1回目は1973年の石油ショックで、2回目は2008年のリーマンショック前の資源インフレだ。

 だがこれまでと決定的に異なるのは、今回が不況下での資源高だという点だ。日本の産業界は不況による国内デフレと資源インフレの板挟みに遭っている。

 2008年当時は国内景気も堅調で、原料価格の高騰を最終製品まで転嫁することができた。自動車や電気製品の値上げも相次いだ。価格転嫁についても表面上は戦いつつも、共存共栄を図る余裕があった。

 しかし、今回は違う。値下げラッシュでデフレが蔓延する今の日本で、2008年当時のような製品の値上げは受け入れられない。また企業収益が芳しくない中で負担増は、共存共栄ではなく共倒れになるリスクすらある。鉄鋼メーカーや流通が、企業の存亡をかけて価格を転嫁せざるを得ない。

 既に異例の展開になりつつある。鉄鉱石の交渉が決着していないにもかかわらず、鉄鋼大手は自動車や電機などの顧客向けの鋼材価格について、1トン当たり前年比約1万5000円の値上げを水面下で打診し始めたという。これに対して、ある大手自動車は部品メーカーに転売する鋼材価格の引き下げを先んじて敢行。鉄鋼大手の今後の値上げ要求に強烈な牽制球を投げた。

 こうした中で、鋼材の調達先を国内メーカーに頼り、購買力が弱い企業は価格交渉で窮地に追い込まれそうだ。自動車や電機、造船、ゼネコンなどあらゆる業界で、鉄鋼高に端を発する企業再編圧力が高まるかもしれない。

 そして、資源高は鉄だけにどどまらない。原油価格もじわりと上昇しつつある。ニューヨーク先物相場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は、2009年平均で1バレル当たり62ドルだったが、今年3月には80ドルを超える水準が続いている。

 資源価格の転嫁を巡って、企業の存亡をかけた厳しい戦いが始まる。コスト競争力や製品開発力などの面で、企業の優勝劣敗がより鮮明になるのは間違いない。鉄の原料価格の高騰はその戦いの号砲だ。

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