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元請け建築設計事務所から依頼を受けて構造計算を行った建築士(以下、構造設計者)の計算ミスを理由に、マンションの管理組合が損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁は2011年3月24日付で損害賠償を認める判決を下した。1年近く前の判決だが、東日本大震災の直後だったため、あまり報じられていないので改めて取り上げたい。

 問題となった建物は、RC造地上9階建てのマンションで、1999年3月頃に建築された。原告は、このマンションの管理組合である。今回、注目したいのは、被告が元請け建築設計事務所から依頼を受けて構造計算を行った構造設計者という点だ。

 この判決を取り上げた2011年9月21日号の「判例時報」(2119号)は、この判決のポイントを次のように要約している。

1.建物の建築に携わる設計者等は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることのないように配慮すべき注意義務を負う。
2. 構造設計者は誤った構造計算を行ったのであるから、建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を怠ったものと認められる。
3.本件マンションは、大規模な地震等により崩壊、破壊または重大な変形等を起す危険性があり、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があると認めるのが相当である。

 

 裁判所は、こうした判断の下で構造設計者の不法行為責任を認容したという。

 さらに、判例時報の記事では、この判決の根拠を次のように解説する。

最高裁判例により、建物の設計者等に注意義務違反があり、そのため建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、これにより居住者等の生命、身体または財産が侵害される場合には不法行為責任を負うべきであるとされた。

 

 ここでいう「最高裁判例」とは、この連載の第2回第3回で取り上げた2007年7月6日付の最高裁判決だ。

 福岡地裁の判決文によれば、原告である管理組合は、このマンションのデベロッパーに対して売買契約に基づく瑕疵担保責任を追及し、訴訟上の和解が成立している。さらに、施工者に対しても不法行為に基づく損害賠償請求がなされ、訴訟外で和解が成立している。

元請け建築士事務所は責任があるが訴外

 この訴訟で興味を覚えたのは、元請である建築士事務所の責任については、判例時報が、まったく触れていないことである。解説文の中では、「建物の建築に伴い第三者に与えた損害については、これまで主として工事請負人の責任として処理され、建築士の責任が直接問われた事例は乏しかった」と記述されている。

 判決文では、「前提事実」として元請け建築士事務所が設計監理を担当し、その管理建築士が確認申請を行ったことが述べられている。

 また、原告側が「被告らの責任」を追及する中で、管理建築士の責任について以下のように言及する。

1.構造計算書の建物荷重の計算の誤りを見落した。
2.構造計算書が一連の計算書としての連続性がないことを見落して、構造耐力上の安全基準を満たさない設計を行った。
3.小梁の許容応力の検討、ひび割れ対策を看過した。
4.設計監理者として床スラブのスラブ圧不足を見逃した。

 

 以上のような判断から、民法709条(不法行為)の損害賠償責任があること、使用者である建築士事務所には同715条(使用者責任)による賠償責任があると主張している。しかし、訴状の中でこれらを被告として列記することをしていないので、裁判所としても裁くわけには行かない。この裁判の被告は、構造建築士一人なのだ。

 判決理由を解説した3項目で1.の記述は、「不法行為の成否という争点に対する判断」の一部として裁判所によって述べられた内容である。「管理建築士資格取得講習」を受講した方の中には、どこかで読んだことのある文だと感じた方もいるのではないか。テキストの第3章「業務に関する苦情と紛争の予防」の中でも、紛争事例の6番目として、2011年7月6日付の最高裁判決は紹介されていたのだ。

 最高裁判決がいかにインパクトを持っているかが理解できる。実は、日事連・建築士事務所賠償責任保険(建賠保険)の事故報告の中でも、この最高裁判決を引用した訴状に何度か出会っている。今後、建築物の安全性を巡り、建築に携わる実務者に対して、この最高裁判決がますます頻繁に引用されることとなり、「不法行為責任」が追及される場面が増えるものと憂慮される。

「構造設計賠償責任保険」の普及が望まれる

  考えてみれば建築物に限らず、物づくりに携わるつくり手が「基本的安全性を欠くことのないように配慮する注意義務」を負っていることは、こうしてわざわざ判決文など持ち出す必要などないほど自明のことである。以前からの繰り返しになるが、建築の実務者にとって「建築物の安全・安心の確保」というテーマに、真摯に向き合っていただく以外に、トラブルから逃れるすべはないだろう。

 構造設計士の担うべき責任は、分けても重大である。ひとたび事故を起こせば、その被害は、業務報酬では補填するべくもない規模となる。建賠保険の事故処理の際に、筆者がよく耳にしてきた「意匠事務所から、構造計算の依頼を受けただけである」という言い訳は、福岡地裁の判決を見る限りもはや通用しないようだ。2010年3月にスタートした日本建築構造技術者協会の「構造設計賠償責任保険」の普及が望まれる。

 被害者の救済という意味では、全会員が加入を果たして、トラブルに備えて欲しいものである。これは、建築士法に基づいて、苦情処理を引き受けることとなった日事連の建賠保険についても同様である。

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